法人税法では、資産の評価替えをして帳簿価額を減額して評価損を計上した場合には、原則として、その減額した部分は損金の額には算入されない。損金の額に算入されなかった部分は、以後、資産の帳簿価額は減額がなされなかったものとして取り扱われる。つまり、固定資産の評価損は損金不算入で、減価償却を通じて年々費用化していくのが原則だが、評価損を計上できる一定のケースがある。
それは、1)災害により著しく損傷したこと、2)その固定資産が1年以上にわたり遊休状態であること、3)その固定資産が、その本来の用途に使用することができないため、他の用途に転用したこと、4)その固定資産の所在する場所の状況が著しく変化したことで、いずれも、それにより固定資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなった場合、さらに5)上記の1)から4)に準ずる特別の事実が生じた場合、である。
5)の「準ずる特別の事実」とは、例えば、法人の有する固定資産がやむを得ない事情により、その取得のときから1年以上事業の用に供されないため、その固定資産の価額が低下したと認められる場合や、民事再生法による再生手続開始の決定があったことにより、固定資産の評価替えをする必要が生じた場合などが含まれる。なお、評価損の経理方法は、資産の評価替えをして、損金経理で帳簿価額を減額することになる。
また、評価損の額は、減額した金額のうち、評価替え直前の帳簿価額と評価替え日の属する事業年度終了の日の時価との差額に達するまでの金額となる。この場合の時価とは、その資産が使用収益されるものとして、そのときにおいて譲渡される場合に通常付される価額による。ただし、固定資産の評価替えが損金算入できるのは上記の場合に限られているので、以下のような事情に基づく場合には、評価損の計上はできない。
具体的には、(A)過度の使用又は修理の不十分等によりその固定資産が著しく消耗している場合、(B)その固定資産について償却を行わなかったため、償却不足額が生じている場合、(C)その固定資産の取得価額がその取得のときにおける事情等により同種の資産の価額に比して高い場合、(D)機械及び装置が製造方法の急速な進歩等により旧式化している場合、などが挙げられている。